「鶴瓶・新野のぬかるみの世界」 1980年11月30日 (2−2)

(1980年)

鶴瓶 もうね、先生のね、いけずって言うかね、???と言うかね、そう言う声がね、ちょっと一瞬、途中でね、”それが甲斐バンドの生き方やな”って言うて、3秒ぐらい間があいた時があったやろ(笑)。あれで、田中を泣かしたんやろ。
新野 (笑)もう、今、ごっつ、恥ずかしいのよねー、何か。
鶴瓶 そんなもんね、恥ずかしいもくそもないわ。もう、俺があの時、どんだけ出られんかったか。それで、今、ポップコーンをほおばって、歌ってる時に、先生らは、いえいえいえ、いい出した。甲斐はもう不愉快や言うてる。うわー、なってる。これは、オンエアー以外の所で、わー、なり出した。そして、おわったんや。な。
新野 みんな歌手でいいじゃないですかと言うのが、僕、今も一緒よ。
鶴瓶 俺に言うても、しゃあ、せんない事やんか。これね、過去を振り返ってんのよ。なー。
新野 はいはい。
鶴瓶 また、そういうこの論議で、俺と闘う訳?
新野 いやいや。そんな意味じゃないですけどね。

(1978年)

新野 ごちゃとちゃ言うなって言うね、言い方よくあるでしょうが。ね。つまり。
鶴瓶 えー、評論家的な言い方するなと、新野先生が、評論家やったら言うてもええという言い方を、今された所でございます。それでは、どうぞ。
新野 だからね、あの、甲斐バンド、甲斐くんって言うひとつのね、まあ、エンターティナーと言うか、アーチストと言うか、ミュージシャンと言うか、こんでええやんか。で、この人がね、郷ひろみや石川さゆりはね、ありゃ、作り物だとかね、何たら言う事、何にもいらんのや。
鶴瓶 その、最初は、どういう所から、そういう話になったん。
新野 彼がね、歌謡曲のね奴らはね、その、作られたね、もんやと。俺のもんは、パーフェクトやと。
甲斐 いやー、あのね、ちょっと待って。
新野 そう言う発言した。
甲斐 新聞って言うのはね、こういう風にさ、ちょっとの言葉で、だんだん、その、ちょっとの部分のニュアンスを引っ張るからね。ものすごい話がこんなふうに大きくなるけどね。俺が言いたいのは、そう言う話じゃない訳よね。
新野 ほなら、甲斐くんの。
甲斐 俺はさ、まずさ、これはもう。
鶴瓶 ちょっと言いなや。
新野 うん。
甲斐 これは、もう、ラジオ聞いてる人ね。
新野 うん。
甲斐 フォーク好きな奴も、ロック好きな奴も、たくさん聞いてると思うからさ。
新野 うん。
甲斐 歌謡曲好きな奴も聞いてると思うから。
鶴瓶 うん、も言いなや、先生。ちょっと待っときや。
新野 うん。
甲斐 はっきりさせなきゃ、ちょっとつらい奴もいるじゃない、きっと、聞いてても。
鶴瓶 うん、うん。
甲斐 俺もやっぱり、自分の世界の事だから言うしね。俺が言いたかったのはね、単純に、その、自分達のわりと、たとえば俺達が、どうして曲を作るか、どうして歌うかみたいな所、確かに俺は、歌が好きだって言うのがある訳ね。で、歌って言うのはさ、確かに人から見たら、歌な訳よ。どんなジャンルがあろうと。それはわかってる。俺、最初、言ったじゃん、それ。それはわかってる。で、俺の精神分析とか、俺の歌のポリシーみたいなのを喋る時にね、比較した方がずっと早いと思ったから。ね。歌謡曲の奴って言ったのはさ、言い方悪いかも知れんけど、俺が最初に言ったのはね、どこか、あれは、まやかし的なものがあるって言い方をした訳よね。
鶴瓶 それでも、あだ花的な所でもいい訳や。
甲斐 いいと俺は言った訳。その、あだ花的な所が、パッと咲いて、パッと消えてしまうような所がね。確かに、美空ひばりって言う人を出せばさ、それは、あれはさ、あるパターンだからね。でも、あるパターンを言ってしまうとさ、わーっと一色になったような感じの錯覚に陥りやすいけどさ、歌謡曲ってのは、どうしたかって言うとさ、やっぱり、その、ある作曲家がいて、ある作詞家がいて。で、その歌い手が、今、どんな心境でいようと構わず、周りでただ作る。で、ただやっぱり、本当の歌い手って言うのは、それに乗って、どれだけ自分の思いってのを照らし合わしてるかって言う事で、素晴らしい歌になるもならないもあるじゃない。それは、俺は別に批判してないよ。もう、最高だと思うよ、それは。俺だって、森進一好きだしさ。
鶴瓶 だから。
新野 ちょっと待って。
鶴瓶 ちょー、待ってな。
鶴瓶 じゃいけん。じゃいけん、ほい。
新野 ほら、勝ったな。
鶴瓶 うん。
甲斐 あー、言いたかったなー、今。
新野 甲斐くんの生き方ね、あの、あまり強固に進めていくとね、つらいと思うねん。と言うのはね。
甲斐 ちょっと待って。
新野 ちょっと待ってね。ほんなんね、あなたね。何月何日、たとえば、このホールで何かやらんならんと言う事ありますね。その出演拒否、あんたはその日、気分悪いから、出演拒否しようと。
鶴瓶 それはまた飛躍やわ。
新野 飛躍やない。そうやんか。そうなるやん。
甲斐 それは、飛躍でしょう。
新野 飛躍じゃないよ。
鶴瓶 それはちゃうよ。
甲斐 俺達は、プロだもん。だって、それだったら、俺達、アマチュアでいいんだもん。そうでしょ。
鶴瓶 たからね。
新野 アマチュア、プロってまた、こっから話が。どこに、アマチュア、プロがあんねんな。
鶴瓶 そんな事言うたら、俺なんかごっつ、つらいで。
甲斐 それは、つらい話だもんね。
鶴瓶 それは言いなや。それはまた先生。それはな、それはちゃうって言う、そんなもん嘘や。それは言いなやな。
新野 そうか、そうか。

鶴瓶 たとえばやで、ジュークボックスがあって、Aの1を選んだ人間が、Aの1の生き方で、Aの1の生き方やで。これが歌謡曲としいな。あだ花的な生き方やとしいな。
新野 うん。
鶴瓶 それで、Aの1に、ずーっと進まないかんと。一生、Aの1で進まな売れへんかっても、たとえ、変な言い方やけども、たとえ、ドサ、回させられても、Aの1で進まないかん人間とやで、これは、作られた人間て、それは、作られた事を好きな人間、おるやんか、小さい頃、”あんた何になりたい”言うたら、”歌謡曲の歌手”言うてる子が、Aの1選んだ訳や。ね。
新野 うん。
鶴瓶 甲斐は、Aの2か3か、わからんねんけども、どうしようかずっと迷ってて、歌が好きやった。とにかくやってた。その歌は、ある程度認められた。で、何かの会で出て、わりとええとこ行った。で、レコード出せへんかって言われた。その時に、まあ、断った。断るわねー。断って、で、こんなんやったら出すと、日本の曲で、こんなんやったら。認められた。契約する。契約しました。Aの3の生き方やった。Aの3の生き方、ずーっと進むにはやね、自分の意志をかなり入れてくれな、進めへんと言う、Aの3の生き方と、Aの1の生き方がある訳や。だから、それを、Aの1とAの3を一緒にするには。
新野 そら、一緒やっちゅうねん。所詮は契約書があったりね、レコードにしたりね。
甲斐 いや。
新野 ファンにね、何やら、集いや言うたりね。これはね、所詮は同じ事やねん。
甲斐 いや、そしたらね。
新野 俺から見たらやね。
甲斐 そしたらね、そしたらね、所詮人間は一緒だって言う言い方と一緒じゃない。
新野 違う、そら違う。
鶴瓶 それ、どうちゃう?
新野 芸能や。な。彼はプロや言うた。ミュージシャンや。プロや。プロやったらね、なんぼ腹が痛うても、盲腸がね。それをちらしながらね、演奏せんならん時、あるやんか。ね。そこにすでに、彼のやね、人間性を無視した行為がなされる訳や。
甲斐 でも、それは違うんじゃない?どうしてそんなに、まわりの奴を考えるの。俺は違うもん。自分がお腹が痛くても、自分が、俺を待ってる客がいると思ったら、歌うよ、自分で。我慢して。
新野 って事は、イヤな時もあるわな。
甲斐 俺、イヤな時、ないよ。
新野 乗らん時や。
甲斐 ない。俺、絶対ない。はっきり言って。
鶴瓶 ほんなら、Aの3の生き方でやな、もう。
甲斐 これまあ、ちょっと意気込んで言うんだけど、俺んちの兄貴って言うのはさ、床屋な訳よ。ね。でね、同じ客が月に2回、来るとするじゃない。だからね、俺が昔、兄貴に言った事ある訳。同じ、毎日毎日やってて、飽きないかって。あの、人の髪切って、ちっちゃい頃、聞いたことがある訳よ。だからね。
新野 お兄さんにね。
甲斐 うん。兄貴に。そしたら兄貴がね、いや、同じ髪を何回切ったとしても、ま、角刈りでもね、アイビーでも何でも切ったとしても、俺の技術をそいつにいつもぶつける。でね、やっぱり、どっか成功せん訳よ。どっか、パーフェ・・、完全にはならん訳。だからいつも、今度こそ、今度こそって思ってやってる。だから絶対飽きない。俺の歌もそうだもん。俺、絶対今までね、自分でもう、1曲目から、あ、1曲目から20曲目までね、完全で終わったって思ったこと、1回もないからね。ステージでやっぱり。でも。それを目指す為に、やっぱりやるじゃない。毎日生きるじゃない。
鶴瓶 自分の為に。
甲斐 自分の為に。
鶴瓶 で、求めてる人の為にね。
甲斐 うん。確かに、辛い時もあるよ、正直言って。でもね、俺、乗らないから、歌うのをやめようと思うくらいなら、最初からプロになってないもん。俺は昔、4ヶ月、サラリーマンだったのね。で、サラリーマンはまずやめて、で、サラリーマンやめて歌に入るって言うと、かっこいいけどさ、俺はかっこよくない訳よ。非常に挫折を感じたのね。100人中90人までがサラリーマンで生きる、あの、サラリーマンって言う世界からさ、俺は生きられなかったのかって言う、失望があった訳よ。で、俺に他にやる事はないかって言ったら、歌って言うのがあったのね。これだったら、ひょっとしたらね、今日、カバン持って、電車に乗って、サラリーマンっているじゃない、たくさん。で、俺は絶対課長になるとか、部長になろうとか思ってみんな働いてる人もたくさんいると思う訳。歌だったらさ。課長になろうと思える世界だと思った訳、自分で。
新野 わかる、わかる、わかる。
鶴瓶 わかる。僕等でもそうや。このタレント業って言うね、あえて、落語家言えへんけど。タレント業って言うね、商売で俺は、部長、課長になれるんちゃうかなと思うたからや。
甲斐 だからね、これ、さっきの話に戻るけど、俺がさっきから非常に言いたい事はね、簡単なことな訳。昔やっぱり、人の曲、たくさん聴いてますよね。レコードで。あの、人の歌、歌う。コードにつけて、ギターで。人の歌って事に対して、だんだん、あの、不満って言うかね、それ以上欲しくなる訳。その時に初めて、自分で詞、書いてみたら書けた。だんだん、だんだん、もちろん、それでは、初めは商売にならないでしょ。ま、商売なんて考えれてないから。本当に、自分の感情に、素直に、あの、曲を書こうと思った。それが、まわりの人から認められた。やっぱり、プロで歌うって事はね、ある意味じゃ辛い事だけど、それがレコードになって出回る。いろんな人達が聴いてくれる。やっぱりそれなりに、いろんなものが跳ね返ってくる訳じゃない。だから俺は、あ、この世界だったら、俺は生きていかれるんじゃないかと思った。だから、俺が言いたいのは、歌謡曲が、あだ花的って言うのは置いておいてね、反論があるとするから置いておいて、俺が言いたいのは、とにかく、俺達の、それがさ、レンズ的にはさ、その、狭い所かも知れんよ。かも知れん。それはいいよ、どうでも。俺はどうでもいいと思ってる、それは。あの、でも、自分の言葉で作って、自分で歌って、どれだけ大事かって言う事をね、俺は言いたかっただけなの。
鶴瓶 うん。
新野 甲斐くんってのはなあ、おもろいわ。第一回目のゲストとしてはね、これは、偶然ながらね、あの、成功したよ。と言うたのは、彼をネタにして、我々言うてるみたいやけどね、やっぱり彼から。
鶴瓶 俺は当たってるやろ、先生。彼はね、中途半端にね、あの、せんと、舌まで出す子やと。ガー、みんな言うてね、言う気力やと、俺は思うし。で、これからもね、あの、ずっとまあ。僕、番組始めた時に、あのー、電報くれたんよ。がんばれよって言うて。あの、東京の番組で、そないしてくれたし、そんな、もう、してくれたって言う言い方もおかしい。ずっとつき合いたいし、ちょっと見てあげてよ。
新野 ちょっと、見てあげような。うん。で、あの、またちょっと意見はちゃうけどな。これまたこの次に、パート2、パート3を。
鶴瓶 ほんで、これを最後に言いたいのは、フォークが好きで、甲斐が好きで、フォークの世界を、傾いて、耳、傾けて、このラジオを聞いてた人間には、先生の意見って言うのは、”何ぬかしとんねん”と思う人間、おる。
新野 ああ、そうか。
鶴瓶 で、先生の年代で、あの、聞いてはった人は、甲斐に、”????こいつは”と言う人間おる。それ言い切ったらそれまでやけども。平行線でずーっと行ってしまうけども。あのー、とにかくやね、ま、それ以上進まへんけども、どうぞ、どうぞ。
甲斐 俺が最後に言いたいのはね、あのー、俺、帰ってもいい訳じゃない、頭に来たら。俺はやっぱり、今、歌って、一瞬にして終わる事よりさ、確かに狭いレンズかも知れないんだけども、歌うって事よりも、歌い続ける事が大事だと思う訳よ。生きるって事よりも、生き続ける事の方が大事だと思う訳よ。やっぱり、それ。
新野 やっぱり、そこの意見、ちゃうねんけど。これ、パート2にしようか。
鶴瓶 そうやね。
新野 つまりな、歌い続ける事よりもね、俺は、1曲の歌を歌う事の方が、俺、大事やと思うねん。俺はね。
鶴瓶 もう、それ言いなや。
新野 また、来るか?
鶴瓶 そない来るか!今、スプリングツアーで、ホール回ってんのに。
新野 そうか。その、甲斐バンドのリサイタル、あるんやね。
鶴瓶 明日やね。もう今日や。えー、厚生年金会館・大ホールでやってくれる。ほんで、彼はもう、歌、好きやし、みんなもう、是非ね、もう乗ると思うし。で、新野新、バカヤローもあると思うわ、たぶん。
新野 うん、ある。
鶴瓶 甲斐コノヤロー、待て、もあると思う。そういうなんもね、どんどんぶつけて。
新野 ちょっと、甲斐くんな。
鶴瓶 もう、言いなって!もう、あれほど言ってんのに。???みたいな性格や。
甲斐 歌謡曲が好きで聞いてる人が、もしいるとするじゃない、この番組に。やっぱり、その人達にも説得するぐらいの事を、俺はやっぱり言わなきゃダメだと思ったのね。
新野 でもね、今、別にね、歌謡曲はそんな事じゃなくてね、かなり、人生論的な生き方の話やからね。
鶴瓶 そうそう。
新野 だからそれはね、それはそれで、あのー、またやり続けようよ。
鶴瓶 ほな、送り出そうや、甲斐くんを。
新野 うん。
鶴瓶 明日、大ホール、今日、大ホールで。
甲斐 歌じゃないですけど、がんばりましょう。
新野 このファイトやからねー。
鶴瓶 そやろ。
新野 俺もたいがい負けへんけどな、キャンキャン来るでー。
鶴瓶 もう、二人でやりーな。その方おもろいわ。
新野 ほな、甲斐くん、どうもありがとう。
甲斐 どうも。
鶴瓶 ごめんなさいね。
甲斐 いえいえ。
鶴瓶 ありがとう。
新野 ま、彼も言い足りない・・・(fade out)

(1980年)

鶴瓶 まだね、あの後ね、先生、俺に向かって言うたやろ。
新野 はいはい。
鶴瓶 あの。
新野・鶴瓶 (笑)
鶴瓶 もうな。
新野 これはね、聞いて貰ったら、第一回目でしたね。
鶴瓶 途中であいつ、帰るわって言いかける所、シーンもあってね。それ、あの、レコードね、流れてる所でね。で、灰皿も持とうかと思うた事もあると。
新野 はいはい。
鶴瓶 言う所も、後日談で聞いたんやけども。うん。あれから、いっぺんも先生、会うてないし。
新野 電話があったじゃないですか。
鶴瓶 うん、あんなん。個人的に、会うてないし。
新野 はい。
鶴瓶 えー、2月の14日にね、コンサートがあるんです。
新野 うん。
鶴瓶 12月の14日。ごめんごめん。12月の14日。
新野 日曜日ですね。
鶴瓶 ええ、日曜日にですね、コンサートがあります。甲斐バンドのコンサートで、府立体育館でね、やりよるんやけど。あのー、10人の方をね、甲斐からね、チケットをとって来たんで。
新野 なるほど。
鶴瓶 まあ、こっちから招待するから、もし行きたいと思う方はね、チケット10枚こっちにあるし、2枚しかないけど、あの、行きたい方はハガキに書いてね。
新野 はい。
鶴瓶 どんどん送って頂きたい。郵便番号530、大阪市北区・・・ラジオ大阪、鶴瓶・新野のぬかるみの世界です。
新野 はい。
鶴瓶 先生って言う性格が・・・、もう。
新野 何でそんな事言うの。嫌らしいわー。終わったあとー、そんなー。
鶴瓶 えー。
新野 あれ、何もね、そない思ったんじゃなくてね、やっぱり僕もまあ、全編キッキッとはなってないけども、瞬間キッとはなってましたですよ。
鶴瓶 先生ね、1回目のゲストにしたらふさわしいわって言うたやろ。
新野 はあ。
鶴瓶 ね。ちょうどよかったなーとかね。あない、喋った後に。
新野 そんなね、念押しの現地を取られると、それは辛いですけどね。
鶴瓶 60になってもそれか?
新野 ほっといてくれ。



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